「推し活」の効用について

皆様こんにちは、デザインチームのSです。

この原稿を書いているのは9月も半ばでまだ暑い日が続いておりますが、ブログにアップされる頃は秋風が少々冷たくなってきていると思います。
急激な朝晩の寒暖差で身体に負担をかけないようにお過ごしくださいませ。 

さて今回のテーマは「推し活」です。
何それ? という方も多いと思いますが、平たく言えば「好きな人物やグループ、キャラクター=推しへのファン活動」という意味です。

前置きが長くなりましたが今回は自分が失意の底から推しに出会い、そこから社会復帰への目標を見つけた話をしようと思います。

父の死から推しに出会うまで

話は7年前まで遡ります。

以前に書いたコラム「障害者事業所の支援者から利用者へ立場が変わってみて」にも書きましたが小学生の時に父が交通事故で重度身体障害者となり、それから約30年の間、両親の離婚や、自分の就職からうつ病を患い離職した経験などを挟みつつ、父の介護を続けて来ました。

うつの症状を治すべく36歳の時に実家を離れてグループホームでの一人暮らしを始めることになり、そこから父も老人ホームへ入居するため、待機期間はショートステイを掛け持ちしながら過ごしました。

しかしようやくホームへ入居した半年後、待機期間中の無理がたたり肺炎で入院してそのまま亡くなりました。

父が他界してしばらくは自分の自立と引き換えに父の寿命を縮めてしまったという自責の念と、それまで生活の比重の大部分を占めていた介護という役目がなくなったことから、「自分の生きなきゃならない理由や役割はもう無いな」という心境になり、通所していた就労継続支援事業所も通所困難になり、退所してしばらくはブラブラと過ごす日々でした。

そんなある日、買い物中のコンビニで一冊の漫画に出会いました。
「ラーメン大好き小泉さん」という漫画で、内容の面白さに惹かれ購入して読んでいるうちにその漫画がアニメ化されることになりました。

衝撃の「新しい世界」

ネットで情報を追ってみると、そのアニメの主題歌「FEELING AROUND」という曲を鈴木みのりさんという声優さんが歌われると知り、

どんな曲なんだろう? と、

その曲をYouTubeの公式チャンネルで視聴したところ、popなセットで歌いながらラーメンを作るという驚愕な内容のMVに度肝を抜かれ、

この子は何者なんだ!? と

さらに調べてみればTVアニメ「マクロスΔ(デルタ)」の主役としてデビューした新人さんで、そのアニメ内の設定 「戦術音楽ユニット ワルキューレ」のメインボーカルを務めており、現在(当時)劇場版が公開中とのことでした。

元々子供の頃からオタク気質ではあったものの当時はそうした世界からは離れていて、

「ふーん、マクロスの新シリーズが劇場公開中なのか……観に行ってみようかな?」と

思い立ち映画館へ。

……観終えて猛烈に感動して映画館を出た直後さらにネットで情報を調べたら、たまたまその映画を観た日に実際のワルキューレの声優さん達が、アニメの世界そのままの設定で横浜アリーナでライブを行ってたのを知り、またまた公式チャンネルでワルキューレのMVを連日かたっぱしから観て、その歌声とパフォーマンスにすっかりと魅了されてしまい、

「今のアニメはこんな凄い状況になっているのか!」

と驚き、気が付けば発売中のCDをかたっぱしから買い集め、レンタル屋さんでTV版全巻を借りて観るという状態になりました。

それからはメンバーの個人活動にも興味が湧き、中でもリーダーを務める安野希世乃さんという声優さんの歌声にはすっかり魅せられてしまい、CDのリリースイベントに足を運びファンクラブにも加入して、しまいには0泊3日で横浜から夜行バスに乗って大阪のライブまで足を運ぶという暴挙(笑)に及びました。

「ようやく夢中になれるものを見つけられた!」

その喜びが全身に力を与えてくれていました。

それは今までの自分が生きてきた狭い世界から新しい世界を知って、知的好奇心が刺激される喜びでもありました。

「無理なく生活と推し活を両立させるためには…?」就活への再起

そんな生活を送っていた矢先に季節の変わり目から体調が急激に悪化して主治医に診てもらったところ、コンディションを安定させるための療養入院を勧められ、2か月半の入院生活をすることになりました。

病院生活で体調とメンタルを安定させるためにリハビリをしつつも、入院費や留守宅の維持にはどうしてもお金がかかりました。

その時に遅まきながら、初めて

「今までのライフスタイルでは推し活と生活を両立させるのは無理があり過ぎる。何とか体調を安定させて、無理なく務められる働き先を見つけなくては。」

と思い至り、退院後に地元の相談事業所へ行き、就労移行事業所に通所して働くためのスキルを習得することにしました。

最初は半年か1年ほどで就職先を見つけるつもりが、通所開始から約半年後、世間はコロナ禍の真っ只中になり、障害者雇用枠の募集や面接の機会も激減、運よくエントリー出来ても不採用の連続となる日々が2年近く続きました。

焦りがつのる中、ハローワークでほまれの家横浜の求人を見つけ、藁にもすがる思いで面接に臨みながらも何とか採用をいただき、おかげさまで今日に至っています。

生きるための動機は人それぞれで良い!

ここまで読まれて

「なんて遅い自立なんだ…」
「こんな馬鹿げた動機で就職のモチベーションを保つなんて…」

と呆れてる方もいらっしゃるかと思います。

自分でも我ながらバカだなよなぁと書いていて思います。

それでも生きる目的を見失って自暴自棄になっていた日々が、推しと出会ったことで今まで自分の心の中で止まっていた時計の針が動き出し、推し活を通してSNS上での趣味仲間、一緒に就活を通して励ましあって今も交流が続く友人たちに出会うことが出来たのを考えると、たとえ人より歩みが遅くても自分の道というやつが見つかって、覚束ない足取りでも今は自分の足で歩いていけてることは幸運だと思えます。

パートナーや家族のため・社会貢献のため等々、人が生きて働いて行くための動機は多々ありますが、どれが正解でどれが間違っているなんてことはなく、生きて行くための意味づけや目的は他者の命や尊厳を損ねるような反社会的な行為でない限りは自由で良いのだと今の僕は考えております。

推しに出会ってから5年、今年の4月にライブチケットの抽選が当たり、念願の初ワルキューレライブを千葉の幕張メッセまで観に行くことが出来ました。
コロナ禍の中で運営さんとファンが最大限の注意をはらって無事に開催されたイベントで、映像や音源では味わえない生のライブ空間に思う存分浸れた至福のひと時でした。

そして今日も次なるライブやイベントのチケット代や交通費、ライブグッズ代、そして毎日の生活費を稼ぐべく、僕は頑張って働くのです……。

君はたとえそれがすごく小さな事でも
なにかに凝ったり狂ったりした事があるかい?

たとえばそれがミック・ジャガーでも
アンティックの時計でも
どこかの安いバーボンのウイスキーでも

そうさなにかに凝らなければダメだ
狂ったように凝れば凝るほど
君は一人の人間として幸せな道を
歩いているだろう

作詞・作曲:かまやつひろし「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」より。

次回の更新もどうぞお楽しみに!

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※このブログは、神奈川県横浜市にある就労継続支援A型事業所ほまれの家横浜」のSが執筆しました。