大人が読んでも面白い絵本の世界

みなさんこんにちは。

つい先日年が明けたと思っていたら、もう三月になってしまったという事実に驚きを隠せないホシです。

さて、私自身子育てもひと段落しており、もうずいぶんと前のことになるのですが、子供がまだ小学生だった頃に読み聞かせのボランティアというものをやっておりました。

朝の10分ほどの時間をもらい、各教室を訪れ、持ち寄った本を読み聞かせる、というボランティアだったのですが、これがなかなか楽しいものでした。

何せまだあどけなさの残る一年生から、大人の階段を上り始めようとしている六年生までと、年齢層の幅がとても広く、同じ絵本を読んでも全く違うリアクションが返ってくるんです。

ですから、同じ本でも学年ごとに違った読み方をしたり、あえて同じ読み方をしてリアクションを探ってみたりなど、私なりにいろいろと工夫をしながら活動をさせてもらいました。

そんな読み聞かせボランティアで読ませていただいた本は、今この世に出ている数々の名作の氷山の一角ではありますが、今日は私が読んだ数々の本の中から、お気に入りの本を数冊ご紹介させていただけたらと思います。

どうぞのいす

どうぞのいす

1.どうぞのいす
作:香山 美子 絵:柿本 幸造 出版社:ひさかたチャイルド
https://www.hisakata.co.jp/book/detail.asp?b=025250

「つるの恩返し」というお話は皆さんよくご存じですよね?

助けてもらった鶴が、恩を返しにおじいさんの家を訪れるというお話です。

しかしこの「どうぞのいす」は恩返しではなく「恩送り」のお話なんです。

ウサギさんが作った一つのイス。
ウサギさんはそのイスを森の中に置き「どうぞのいす」という立て看板を付けました。
最初にやってきたロバさんは、そのイスにドングリがたくさん入ったかごを置いてウトウトと居眠りをしてしまいます。
すると今度はクマさんがやってきて……

一つのイスから始まる思いやりの連鎖を描いた、ほっこり優しいお話です。

この絵本は幼児向けのお話なのですが、私はこれをあえて高学年の子に読み聞かせ「自分がもらった思いやりを、ほかのだれかに渡すと、みんなが優しい気持ちになれるよね」と、いつも一言付け加えていました。

年齢に関係なく「どうぞ」の心はやさしさの「和」となって、世界に笑顔があふれるといいなという願いを込めて、この絵本をオススメします。

いるの いないの

いるのいないの

2.いるのいないの
作:京極 夏彦 絵:町田 尚子 編:東 雅夫 出版社:岩崎書店
https://www.iwasakishoten.co.jp/special/kaidan/07953/

この絵本はとにかく怖い!

全体の絵の雰囲気、淡々と静かに刻まれる言葉のリズム、紙をめくるたびにドキドキしてお化け屋敷を歩いているような感覚になり、不気味ながらもワクワクとさせてくれます。

低学年の児童にはちょっと怖すぎるかもしれませんが、高学年にはウケること間違いなし。

絵を見ただけでも伝わる木の床のきしむ音や薄暗い天井の木目、照明が届かない暗闇に何かがいる気がしてしまうあの感覚。
子供たちには非現実的な雰囲気に感じる風景も、大人にはどこか懐かしくリアルに感じられるはずです。

絵本と侮れないゾッとする面白さをぜひ体験してみてください。

うどんのうーやん

うどんのうーやん

3.うどんのうーやん
作:岡田 よしたか 出版社:ブロンズ新社
https://www.bronze.co.jp/books/post-63/

人手が足りなくて困っているうどん屋さん。
そこに一件の出前注文の電話が入ります。
出前に行きたくても人がいない。
それならば、と、うどん自らが出前に出かけるというトンデモ発想から始まるお話です。

このうどんの「うーやん」。
何が面白いってとにかくよくしゃべる!

道中出会う様々な仲間(食材?)に流ちょうな関西弁で調子よく話しかけると、あっという間に仲良くなって、ほいほいと自分のどんぶりに乗せていく。
様々な困難に立ち向かいながら、うーやんは果たして無事おいしいうどんを出前できるのか?

子供たちはうどんが関西弁をしゃべるだけでもう大爆笑。

そしてコミカルなのに美麗なイラストがよりいっそう物語のシュールさを引き立たせ、大人も思わずクスリとわらってしまいます。

このシリーズのほかの本(こんぶのぶーさん等)もとても面白いので、気になる方はぜひ併せて読んでみてください。

落語絵本4「じゅげむ」

川端誠落語絵本4「じゅげむ」

4.落語絵本4「じゅげむ」
作:川端 誠 出版社名:クレヨンハウス
https://www.crayonhouse.co.jp/shop/g/g9784906379804/

大人気落語絵本シリーズの第四弾。
これまたみなさんご存じの落語「じゅげむ」を絵本にした作品です。

念願の男の子の誕生に大喜びする父親が、息子に縁起のいい名前を付けようとお寺の和尚さんに相談しにいきます。
和尚はあれやこれやと縁起のいい言葉を教えてくれますが、すべての言葉を並べていくと、とんでもなく長い名前になってしまいました。
すくすくと育つじゅげむ君が、本人の知らないところで周囲の人たちをどんどん混乱に巻き込んでいく、思わずクスリと笑ってしまうお話です。

「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ……」という名前のリズムは耳に心地よく、ついつい一緒に口ずさみたくなってしまうフレーズで、老若男女問わずクスリと笑ってしまいます。

読み聞かせをしているうちに子供のほうがあっという間に覚えてしまったり、誰が速く言えるかと競い合ったりと、当時は教育番組でも放送されていたこともあり学校では一大ブームを巻き起こしました。

川端誠先生の落語絵本は、ページをめくる間や言葉のリズムをとても大切にされていて、落語本来の面白さが絵本で見事に表現されています。
また、江戸庶民の生活が一枚一枚の絵の中に丁寧に描かれていて、隅々までゆっくりと絵を眺めてみたくもなります。

絵本ならではの紙をめくる面白さを実感できる本です。

*     *     *

子供のころ大好きだった絵本も、大人になってから読むとまた違う面白さを発見したり、子供の時には気が付かなかった深いメッセージを感じたり、新たな発見があって面白いものです。

絵柄がかわいい本、タイトルが面白い本、帯に目をひかれた本。本の選び方は自由です。
図書館は宝の宝庫。たまにはスマホから目を離して、文字の面白さを体験してみてはいかがでしょうか?

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※このブログは、神奈川県横浜市にある就労継続支援A型事業所ほまれの家横浜」のホシが執筆しました。