「男の道徳と、人が生きる上で大切なこと」を教えてくれた人 ~作詞家:山川啓介さんの歌について~

きたかぜこぞうのかんたろう
ことしもまちまでやってきた
ヒューン ヒューン
ヒュルルーンルンルンルン
ふゆで ござんす ヒュルルルルルルン

作詞:井出隆夫 作・編曲:福田和禾子 

山川 啓介(やまかわ けいすけ、1944年〈昭和19年〉10月26日 - 2017年〈平成29年〉7月24日)は、日本の作詞家、脚本家。
本名は井出 隆夫(いで たかお)。
長野県佐久市出身(本籍は南牧村海尻)。
長野県上田高等学校、早稲田大学第一文学部卒業。
血液型はO型。(出典・Wikipediaより)

皆様こんにちは。デザインチームのSです。

お正月も明けて北風も身に染みる今日この頃、皆様はお大事なくお過ごしでしょうか?

冒頭の歌詞はおそらくは日本で生まれ育った方々なら一度は耳にしたことがあるであろう童謡、「北風小僧の寒太郎」です。

この歌の作詞をされたのは井出隆夫さん。
またの名を山川啓介さんと言います。

山川先生の代表曲は

岩崎宏美さんの「聖母たちのララバイ」「家路」、
矢沢永吉さんの「時間よとまれ」「チャイナタウン」、
中村雅俊さんの「ふれあい」「時代遅れの恋人たち」、
八神純子さんの「Mr.ブルー」
町田義人さんの「戦士の休息」

などなど、昭和から平成、令和の日本の音楽シーンに多大な業績を残された大ヒットメーカーの作詞家さんです。

前回自分のコラムで先頃亡くなられた水木一郎さんの追悼文を書き進めているうちに、自分の人格形成に山川先生の歌詞から受けた影響を書いてみたいと思い立ち、今回は山川先生のもう一つの顔、アニメ・特撮ソングや幼児番組の制作者としての業績を自分の個人史を絡めつつ書き連ねてみることにしました。

例によって、気楽に読み飛ばしていただければ幸いです。

この人は、同じ人……?

筆者の幼少期は第二次ベビーブームで子供の数が今よりはるかに多かった時代で、毎日TVのゴールデンタイムや夕方の再放送でアニメや特撮でスーパーヒーローが大活躍しておりました。

それらを浴びるようにして観ていた筆者は次第にあることに気が付きました。

「なんか、この人達いろんな作品でよく見かける名前だなぁ……?」

オープニングタイトルで見かけるそのお名前は「音楽:渡辺宙明」そして「作詞:山川啓介」のクレジットでした。

「バトルフィーバーJ」
「太陽戦隊サンバルカン」

そして「宇宙刑事ギャバン」と観ていてこのコンビの名前はすっかり頭に焼きついていました。

それから少したち、歌番組で当時新曲として発売されたばかりの「聖母たちのララバイ」を岩崎宏美さんが歌われているのを子供心になんか良い歌だなぁと感じ入りつつ観ていたらば、また「作詞:山川啓介」のクレジットを見つけ、「サンバルカンやギャバンの歌を作った人と同じ人なの……??」と驚き、そこから作詞家さんの名前を意識して歌を聴くようになりました。

驚異の仕事の幅広さ

それから少し成長して、オタクの道に足を踏み入れて、小遣いやバイト代で少しずつ映画やアニメ・特撮のBGMアルバムを買い集めるようになり、やがてインターネット時代の到来が訪れ、ファンの方々が書いたブログ記事などを閲覧するようになり、「この曲も山川先生!?」と驚くことが多くなります。

キャプテンフューチャーの「夢の船乗り」「ポプラ通りの家」、
トム・ソーヤーの冒険の「誰よりも遠くへ」「ぼくのミシシッピー」、
ゴダイゴの「銀河鉄道999」(奈良橋陽子さんとの共作)、「テイキング・オフ!」ete……。

そしてまた驚いたのが本名の井出隆夫名義で手がけられたお仕事の数々。

冒頭で引用した

「北風小僧の寒太郎」をはじめ
「おまつりすんだはらっぱに」
卒園式の定番ソング「ありがとう さようなら」など

作曲家・福田和禾子さんとの数々のお仕事や、

NHKのおかあさんといっしょの「にこにこぷん」「ドレミファ・とーなっつ!」
そして「フックブックロー」の原作・脚本・劇中歌の作詞と、

幼少期から知らないうちに数々の山川先生の仕事に触れていたことを知り、山川啓介名義の歌謡曲でも

柴田恭兵さんの「横浜DAY BREAK」や、
久保田早紀さんの「25時」やアルバム「夢がたり」への楽曲提供、
初期24時間テレビのメインテーマ曲「エバー・グリーン・ラブ」「この星をあなたに」など、

幼少期から子供向け、大人向けを問わず「この歌良いなぁ」と好きだった楽曲の殆どすべてが山川先生の作詞だった事に気が付いたのです。

「山川イズム」に魅せられて

どんどんと山川先生のお仕事を調べて行くうちに

「僕はなぜこんなにこの人の歌詞に魅せられるのだろう?」

と考えるようになっていきました。

特に宇宙刑事ギャバンをはじめとしたヒーローソングの数々には大人になった今もなお聴くたびに子供の頃とはまた違った意味で心を揺さぶられます。

悪い奴らは天使の顔して
心で爪を研いでるものさ
俺もお前も名もない花を
踏みつけられない男になるのさ

作曲:渡辺宙明 編曲:馬飼野康二
歌:串田アキラ 宇宙刑事ギャバン(1982)OPテーマ2番より

太陽が燃えているかぎり
必ずまぶしい朝が来る
悲しみの夜が続いても
君は負けずに 朝を待て

作・編曲:渡辺宙明 歌:串田アキラ 
太陽戦隊サンバルカン(1981)OPテーマ2番より

以上の2曲はほんの一例ですが、山川先生の歌詞をずっと聴きこんでいると対象が子供相手でも「子供」の定義が普通とは少々異なる事に気が付きます。

通常の子供向け楽曲では子供を幼児と定義していることが多いですが、山川先生の歌詞は子供=幼児ではなく、「子供=未来の大人たち」と捉えて、その大人たちへのメッセージソング・
応援歌として作詞をされているのが言葉の選び方から分かってきます。

そんな「山川イズム」が最も色濃く現れているのが、ファンの間でも名曲と名高い宇宙刑事シャリバンのEDテーマ、「強さは愛だ」です。

強いやつほど 笑顔は優しい だって強さは愛だもの
お前と同じさ 握った拳は 誰かの幸せ 守るため
倒れたら立ち上がり 前よりも強くなれ
苦しみを 苦しみを越えようぜ
Oh, Yes 俺たち男さ 男さ

数え切れない 夜空の星でも きっと誰かが 夢見てる
お前と同じさ 明日が今日より いい日になれと祈ってる
悲しみに微笑んで 喜びにうなずいて
思い切り 思い切り 生きようぜ
Oh, Yes 俺たち仲間さ 仲間さ

倒れたら立ち上がり 前よりも強くなれ
苦しみを 苦しみを越えようぜ
Oh, Yes 俺たち男さ 男さ

作・編曲:渡辺宙明 歌:串田アキラ

思わず全歌詞を引用してしまいましたが、東日本大震災の際に被災地のラジオ局へこの曲のリクエストが相次いだという逸話をもつ本曲、時を超えてたくさんの「未来の大人たち」に受け継がれたのがよく分かります。

男の道徳、そして人が大切にしなきゃいけないこと

町田義人さんの「戦士の休息」や、劇場版「わが青春のアルカディア」主題歌には「笑って死ねる人生」というフレーズが、「横浜DAY BREAK」には「男なんて弱くて愚かだから こだわるものなしに生きては行けない」というフレーズがそれぞれ登場します。

一見刹那的に聞こえる歌詞ですが、前述のヒーローソングやこれらの歌には、弱さや脆さを抱えつつも、男はそれでも力いっぱい前を向いて生きて行かなきゃ行けないという「男の道徳」が込められていると筆者は感じます。

それでもどうしても後悔して悲しくなってしまう時にも、山川先生の歌詞はしっかり寄り添って、優しさや人を慈しむ心を忘れないフレーズをたくさん残してくれてくれています。

その中から2曲引用して、今回のブログを終えたいと思います。
今回紹介した楽曲、そして山川啓介ワールドへ皆様が扉を開かれるのを楽しみにしています!

生まれて来なければよかったなんて 心がつぶやく日は
人ごみに背を向け 会いに行くのさ なつかしい海に
幼な児よりも ひたむきに 遠い名前を叫んで
汗ばむ心 潮風が 洗うにまかせれば
いつの間にか 生きることが
また好きになる ぼくだよ

作・編曲:筒美京平 歌:中村雅俊 ゆうひが丘の総理大臣(1978)EDテーマ「海を抱きしめて」より

せかいがおおきな ジグソーパズルなら
ぼくたちちいさな ピースだけれど
おんなじかたちはないんだよ
きみだけのばしょ きっとあるんだよ
しあわせさがし はぴねす・ぱずる
かなしまないで いまはひとりでも
どこかにこころをぴったりつないで
ぬくもりわけあう だれかが まってる

作・編曲:服部隆之 歌:平積傑作 NHK「フックブックロー」挿入歌「はぴねす・ぱずる」より

次回の更新もどうぞお楽しみに!!

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※このブログは、神奈川県横浜市にある就労継続支援A型事業所ほまれの家横浜」のSが執筆しました。